前回に引き続きジブリ祭りです。
世間的には評価の低い【ゲド戦記】ですが、大人になった自分なら再評価できるんじゃないかと思い、期待を込めて今日はゲド戦記を視聴してみました。
ジブリの後継者の一人でもある、宮崎吾郎氏を応援したい気持ちもありましたね。
ちなみにゲド戦記を視聴するのは、十数年前に劇場で見たとき以来です。
当時としても印象に残ってるのは、
- アレンの中二病バトルシーンが良かった
- テルーの唄を歌うシーンが長すぎてウザい
- なんか暗い塔みたいなところで戦う
- えっ?終わり?…戦記って何だったの?
というような感じでした。
まぁまぁ、まだ当時ガキンチョだった頃の印象ですからアテになりません。
なお、評価のハードルが下がりすぎないよう、比較対象として前日に【もののけ姫】を視聴したのでバッチリです。
多少はいいところがあればお気に入りの作品に加えたい気持ちもあったのですが…
問題点
終盤が退屈すぎる
映画【ゲド戦記】の一番の問題点は、終盤が退屈すぎることです。
中盤まではそれなりに面白く見れたんですが、終盤は本当に見どころがない。
具体的には剣と魔法のファンタジーなのにバトルシーン、アクションシーンがほぼ皆無なところです。
ラスボスである『クモ』と主人公『アレン』が対峙するクライマックスでは、アレンが2、3回剣を振るだけでバトルが終了してしまいます。
というか映画全体を通しても、アレンが剣(鞘含む)を振ったのは5回くらい。
なんなら前半のアクションパートの方がまだ印象に残りそうなほど、ラストバトルが終わっています。
全体を通して地味な会話パートが長いのは全然いいんですよね。良いことも言ってるし、緩急もそれなりにあるから多少は見せ場もある。
けど、クライマックスで全然盛り上がらないのはエンタメとして致命的です。
当時、宮崎駿に「アクションに逃げるな!」とか言われたんだろうか?とか考えて、『宮崎吾郎』監督を擁護したいと思ったんですが、【もののけ姫】だってサンとエボシ御前のバトルや、アシタカの怪力弓矢とか、分かりやすい面白さはありました。
なのでジブリがそういうアクションを否定することも考えづらいんですよね。
そんなわけで、ゲド戦記の問題点の大半が終盤の盛り上がりの無さです。
魔法の剣でラスボスを一回攻撃したら、なんか敵がやたら弱体化して、追いかけてたらなんか勝った。
くらいのクライマックスです。
そうそう、ラストで階段が崩れて、足場が悪いところをアレンがピョンピョン飛び越えて敵を追いかけるシーンがあるんですが、あそこだけ妙に作画がヌルヌルだったんで、多分宮崎吾郎監督的にはあそこが見せ場だったのかも。
…うーん。
ハイタカ、お前っ…!なんかしろよっ!
師匠ポジションの魔法使い『ハイタカ』は、前作主人公のような立ち位置で終始強キャラ感が漂うカッコいいキャラです。(ナウシカに出てくるユパ様みたいな感じ)
十数年前に初めて【ゲド戦記】を見たときは、100%『アレン』が主人公という見方をしていました。
この『アレン』がまぁ、冒頭でありえんくらいヤバいことやらかしてるし、その上終盤までシンエヴァ前半のシンジくん並みにウジウジしてるし、cv岡田准一が合ってないし、全然魅力が低い主人公です。
なので劇場で見ていた当時の私のゲド戦記の評価は、今よりも一層低かったように思います。
しかし、大人になって視聴すると、師匠ポジの『ハイタカ』が主人公のように見えてきました。
実際、原作小説のゲド戦記ではハイタカ(ゲド)が主人公らしく、設定的にも前作主人公のようなポジションです。
中盤まではカットも多いし、cv菅原文太が激シブだし、よく見れば顔もカッコいい。
「ああ、この映画はアレンとハイタカのW主人公の映画と見れば面白いじゃないか!(?)」てな感じで見ていました。
でもさぁ…クライマックスでハイタカが急にフェードアウトするんですよ!!
マジで、「脇腹、打っちゃったかなぁ?」くらいのダメージで、なんの行動もしないまま、ずっと友人に肩を支えられて映画が終了します。
お前、それでもW主人公かよっ!!!
なんかしろよっ!!!!!!!
っていうのが今回の一番の感想です。
一応ね、「実際は余裕があったけど、ハイタカはアレンの成長を見届けたかった」という擁護ができそうなシーンではあるんですが、それにしてはハイタカ側も余裕なさそうな感じ。
この映画唯一の良心だったハイタカも、クライマックスで一気に株が下がっちゃうんですよね…
ちなみに作中で使った魔法は、自分の顔をジジイに変装する魔法と、松明を灯す魔法だけです。(多分)
とある事情により、なるべく魔法を使わない縛りプレイをしているらしいのですが、それにしたってねぇ…
せめてラスボスと戦うときくらいは何かしようよ。
クモ…お前、どうしちゃったんだよ…
中盤までは面白かったと何度か書きましたが、その功績の半分くらいは悪役の『クモ』が魅力的だったおかげでした。
この『クモ』というキャラは性別が不詳な見た目をしており、声もセリフも不気味に魅力的でカッコいいです。
過去に『ハイタカ』との因縁もあり、実力も作中でトップクラス。性格も残忍で掴みはバッチリな悪役でした。
…なのに、クライマックスではアレンの魔法の剣で腕を切られただけで大幅に弱体化し、皮膚は溶け、見た目はハゲになり、セリフも「怖い怖い」ばっかの超絶小物キャラに変貌します。
(腕はすぐに再生したのになんで?)
まぁ、魔法の剣で大幅弱体化までは許せたんですが、キャラクター(性格)までゴミカスになるのはもう残念で仕方ありませんでした。
クモ…お前…、なんでこうなっちゃったんだよ…(泣)
というのが今回見た感想です。
てかもう映画の尺的にも、ラストは風呂敷を畳めるだけ畳んだ感がありました。
敵も味方も世界観も、クライマックスで全部尻すぼみになる映画。
【ゲド戦記】はそんな映画でした。
良かった点
良かった点としては、意外にも中盤までは結構見入って楽しめたところです。
奴隷売買や詐欺が横行する巨大商業都市の町並みは、こういう世界観のRPGしてぇ~となるくらいにはワクワクしました。
あと、冒頭で印象に残っていた「アレンの中二病バトルシーン」。
これはやはり当時の感性が正しかったのか、今見ても結構カッコいいなと思いました。
まぁ、数十秒で終わってしまうんですけども。
あとはハイタカがカッコよかった…んですが、やっぱりクライマックスで出番が無いのは流石に終わってます。
クモも、昔印象に残ってた以上にカッコよかったんですけど…やっぱりクライマックスで(以下略)
作品のテーマである、「あなたは死を恐れてるのではなく、生きることが怖いのよ」というようなものも悪くはない。
ハイタカやテナーとの農作業も、生活感があって退屈はしませんでした。
というかもうハイタカが出てくるシーンが全部好きですね。父性が高すぎてファザコンになりそう。
こんなところですかね。レビューおしまい。
再評価は、出来ませんでした…