友達から借りたまま積んでいた小説『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』を読み終わりました。
帯のアオリにもあるようにかなり高い評価を受けているらしく、軽い気持ちで手に取っても大抵の方は面白く読めるのではないかと思います。
活字初心者の私もそれなりに楽しく読むことができました。
初版は2019年9月で、すでにネットではネタバレ感想が溢れているし、書かれていることも大体クライマックス部分に集中しているので、特段私が書くこともないのですが、ハードカバーの表紙になっている『城塚翡翠』というキャラを中心に色々と感想を書き殴ろうと思います。
一応ネタバレあり、だと思います。多分。
城塚翡翠というキャラクターについて
まずこの小説を楽しめるかについては、ヒロインとして描かれる『城塚翡翠』を好きになれるかどうかが大きいと思いました。
城塚翡翠は華奢で色白で瞳が翡翠色で、薄幸そうでおしとやかで健気でどこか神秘的という、童貞の欲しいものリスト全部乗せみたいなキャラクターになっています。(偏見)
ですが、所々で「ひゃうっ!」みたいな声を上げたりドジっ子アピールをしたりして、正直私は読んでいて結構キツイなぁと思う部分がありました。
だからこそクライマックスやエピローグでの描写が映えるのですが、やはり城塚翡翠が男性にとって都合のいいキャラ描写なのが気になり、中盤まではどうにもラノベ感を感じてしまった印象です。
クライマックスでの大見得のシーンも、なるほどな、とは思ったものの、じゃあ個々の事件のトリックの整合性を見直してみるかとまでは思えず、「創作なんだからどうとでも言えるじゃん」という気持ちの方が上回ってしまいました。
読了後に色々と感想を見て回りましたが、やはり個々の事件を見直して語っている人は皆無でしたし、「城塚翡翠すげーっ!!」で思考が止まってる人が多そうなのに絶賛されまくってるのが、個人的には引っかかってしまう点でした。
また、エピローグでの翡翠ちゃんは確かに可愛かったですが、全体を通してみると得体の知れなさが際立ってしまって、私は城塚翡翠を推すことはできませんでした。
だってこんな女いたら怖いですもん。
香月史郎について
主な語り手、というか主人公である香月史郎。
彼もまたラノベの主人公?というわけではありませんが、妙に女性にモテて、賢くてイケメンで、多分高身長でスラッとしてます。
クソが(直球)
私はこの小説の犯人は最初の1ページ目で予測できていてイキっていたのですが、他の方の感想でも予測できていたというのをチラチラと見かけたので、作者的にはあえてそうしたということなのでしょうね。
ちなみに私が引っかかったのは犯人に対する「彼」という文字。
証拠を残さない亡霊のような殺人鬼という描写なのに、なんで男だって分かってるんだろう、これは誰目線なんだろう。というところから序盤から展開が読めてしまっていました。
まぁそれすら作者の手のひらの上だったってのがこの小説の凄い所ですね。
ちなみにこの香月史郎は、作中で最もカワイイ後輩ちゃんから好意を持たれ、先ほどの城塚翡翠とも知らず知らずの内にいい関係になっていて唾を吐きたくなります。
もしかしたらこのイケメンスカシ野郎と翡翠ちゅわんとのイチャイチャが楽しめてれば、ラストも脳破壊されてもっと深いカタルシスがあったしれませんが、残念ながら私は人間ができていないので、そこまでこの二人に思い入れることができませんでした。
伏線回収ハイズドーン!が評価されることについて
この小説、というかまぁ最近流行りの小説がそうなのかもしれませんが、伏線回収が見事だったり、ラストのどんでん返しでビックリしたことが評価されがちなのでは?と気づかされた作品でした。
本作もエンタメ的で面白い小説ではありましたが、それゆえにドラマ化もされやすそうだし、ラストの狂気的な城塚翡翠のシーンは最近の寒いテレビドラマなどに既視感を感じるものでもありました。
ビックリして楽しめた小説ではあったし、もう一度読み直せば違う見方ができるという点ですごい小説なのは確かなのですが、どうにも絶賛までは至らないかなぁといった感じです。
まぁ逆張りガイジ陰キャの戯言だと思ってもらえれば幸いです。